ジェルポリッシュが硬化しない理由:ランプ波長と光開始剤の関係
「不良ジェル」というクレームの多くは、ロット不良ではなくランプのミスマッチです。光開始剤とランプのピークがどう噛み合う必要があるのか、TPO禁止で何が変わったのか、そして10分でできる硬化テストの方法。
結論から言うと:ジェルは、光開始剤がランプの出す波長の光を吸収することで硬化します。光開始剤を変えれば、同じ30秒の硬化が効かなくなることがあります。2025年9月1日にEUでTPOが禁止されて以降、再処方された多くのジェルは365 nmを必要とする光開始剤に依存しています。405 nmしか出さないランプでは、どれだけ照射しても表面はベタついたままです。
仕組みを1段落で
光開始剤は狭い波長帯の光子を吸収してラジカルに分裂し、そのラジカルがモノマーをポリマーに変える連鎖反応を開始します。ランプの発光と開始剤の吸収が重ならなければ反応は起きず、光は皮膜を透過するだけです。ネイル用ランプはフルスペクトルではありません。LEDユニットは通常365、395、405 nm付近に複数のピークを持ち、UV蛍光管はより広い帯域を出します。「30秒」は、特定の処方を特定のランプで硬化させた検証結果であり、ジェル全般の性質ではありません。
| 光開始剤(代表例) | 吸収領域 | 適するランプ | 備考 |
|---|---|---|---|
| TPO | 約380–420 nm | 395 / 405 nm LED | 2025年9月1日以降、EU化粧品では禁止 |
| BAPOおよび誘導体 | 約365–405 nm | 広帯域LEDまたはUV管 | TPOの代替として一般的。高配合ではやや黄変する |
| TPO-L | 約380–405 nm | 395 / 405 nm LED | TPOと同じ規制圧力下にある液状アナログ |
| ITX/アミン系 | 約380–420 nm | 405 nm LED | 深部硬化に強いが、臭気と黄変のトレードオフがある |
| 365 nm専用系 | 約340–380 nm | 365 nm LED | 旧来のUV管向け処方に多い。405 nmのみのランプでは硬化不足になる |
この表は処方仕様ではなく、サプライヤーとの協議の出発点として扱ってください。実際の吸収は系全体に依存し、上記の領域は正確なピークではなく目安です。同じ変更の規制面についてはTPOとTMOの比較で扱っています。
ジェルがベタついたままになる6つの原因
- ランプのミスマッチ:処方が365 nmを必要とするのに、ランプのピークが405 nm。
- ランプの経年劣化:LEDの出力は年々低下し、5年使用したランプは外見上故障していなくても相当量の光量を失っていることがある。
- 距離と角度:1 cmではなく5 cmで照射する、手を斜めに構えるなどで、実際に届く照射量が低下する。
- 皮膜厚:カラーやビルダーを厚く盛ると表面だけ硬化し、内部は柔らかいまま。薄く塗り、層ごとに硬化させる。
- システムの混在:他社のベースやトップコートを使うことが、硬化しないベタつき層(未硬化層)の最も多い原因。
- 低温・長期保管品:粘度や開始剤の分散状態は保管で変化するため、寒冷な場所に置かれたジェルは流動性も硬化挙動も変わる。
硬化を正しくテストする方法
- クリアチップに1層塗って硬化し、乾いたティッシュで表面を押さえる。何も付着しなければ表面は硬化している。
- アセトンで30秒こする。色がすぐ取れるなら、単なるベタつきではなく硬化不足。
- 24時間後の確認も行う。収縮や浮きはランプの前ではなく翌日に現れる。
- ランプ機種、光源の使用年数、硬化時間をバッチ番号とともに記録する。これがクレームを解決する記録になる。
発注書に記載すべき事項
- ランプ仕様を伴う硬化条件。「LED 365+405 nmで30秒、48 W」は検証可能だが、「30秒で硬化」は検証できない。
- 処方が検証された皮膜厚の範囲。
- ベース・カラー・トップが同一サプライヤーで揃うシステムか、他社製品との併用を想定するか。
- バッチごとの硬化テスト結果。最低でも、後日の紛争を解決できる保存サンプル。
TPO禁止の商業的影響
欧州のサロンは2025年後半、TPOを含む在庫が販売も使用もできないことに気づくことになり、ブランド側は同じ時期に再処方に追われました。EU向けに仕入れる場合は、TPO不使用の書面による表明と、特定ランプでの硬化検証を求めてください。TPOを規制していない市場向けに仕入れる場合は、グローバル共通の1処方にするか2処方に分けるかを、意識的に決めてください。2処方の運用はコスト増ですが、顧客のランプで硬化不足になる単一処方のほうが高くつきます。光以外の要因による不良については、ジェルポリッシュの7つのトラブルをご覧ください。
ランプ仕様と仕向市場をお知らせいただければ、当社のどのシステムがその条件で検証済みかをご案内します。該当がない場合は、その条件に合わせて設計します。